AI未導入の保守開発プロジェクトにおいて仕様駆動開発(SDD)を導入して原価25%減らした話

目次
1. はじめに
私のチームでは、お客様(発注元)の要望をすでに稼働しているシステムに落とし込む開発をしています。
いわゆる、「保守改善」「派生開発」と呼ばれる仕事になります。
開発プロセスはアジャイルで、毎スプリント一定の品質/生産性を満たしています。
こうした状況のなかで、自社からも発注元からも「AIで開発を効率化し、原価を下げたい。」という声が上がるようになりました。
単にAIツールを導入して各工程の作業を速くするだけでは劇的な改善は見込めないと考え、
開発プロセスそのものを仕様駆動開発(SDD)ベースに組み替え、実際のプロジェクトで試してみました。
その結果、品質と生産性の水準を維持したまま、 メンバー数を20%/原価を25%減らす ことができました。
本記事では、そのために何を変えたのか、原価削減以外に得られたもの、AI導入のメリット/デメリットについて、現場で使っている仕組みを交えながら書いていきます。
2. 今までの開発プロセス(AIなし)
今までの開発プロセスでは、1要件(PBI)ごとにV字モデルに沿って全て人の手で作業を行っています。
SEが要件定義/基本設計を行い、PGは詳細設計/実装/単体試験を実施しています。
基本設計から単体試験まで各フェーズの出口にレビューがあり、上流はPL、下流はTECリードが成果物を確認していました。
※要件定義は、発注元への説明を持ってレビューとしています。(発注元への説明時にはPLも同席。)
本プロセスでは、 レビュー依頼がPL/TECリードに集中する ことが課題になっていました。
そのため、以下の問題が発生していました。
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レビュアーが回らなくなると途端に進捗管理が複雑になり、作業の入れ替え・差し戻しが増える
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そもそもPLの本当の仕事はレビューではないが、それに多くの時間を使ってしまい、全体計画やリスク課題管理等に時間を使えない
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TECリードによるレビューは、作業量的にプログラムの書き方のチェックしかできず、要件誤りまで指摘できていない
その結果、案件を回せる規模は レビュアーが回せる量 で頭打ちになり、案件規模を増やすには人数(特にPL)を比例して増やすしかありませんでした。
さらに、PLには管理業務に加えてレビューも求められるため、プレイングマネージャー(レビューも実施する)でなければプロジェクトが回らない、という人材面の制約もありました。
3. 仕様駆動開発(AIあり)
- AIによる一部作業実施
- フェーズとしての詳細設計の廃止
- 役割としてのPG撤廃
4. チーム体制の変化と開発原価
5. メリット/デメリット
しかし、デメリットも存在しています。

デメリットの2、3について、もう少し補足します。
デメリット2 判断作業の増加による心理的コスト増加
AIによる成果物の正誤判断を、各SEが自身で行う必要があります。今までは、最終的な正誤判断をPLが担っていましたが、今後はその責任が各SE個人のみに移ります。人によっては、その心理的な重さを負担に感じる恐れがあります。経験が伴わない状態でAIが出力した知識/技術を納品する、今までの働き方にない負担なるのではないかと。
⇨だからこそ、PLの空いた工数の使い方が重要になります。今までの採点型レビューではなく、SEの不安点を一緒に考える並走型相談を実施していきます。並走型相談を通し、各SEがPLと同じ判断軸を持てるようになるのではないかとも考えています。
デメリット③ 判断作業の増加による心理的コスト増加
受託開発の現場では、これまでおおよそ次のような階段が想定されることが多かったと思います。(年数は目安)
PG(3〜5年)⇨ SE(5〜8年)⇨ PL(5〜8年)⇨ PM ⇨ 管理職
ですが、PGの作業がAIに置き換わっているため、新人はテスターから仕事を始めていくことになります。「とりあえずプログラム書いて」といった仕事がなくなるため、SEの土台となる知識を、PGとしての実務を通して学ぶことができない恐れがあります。
⇨ただし、これについてはデメリットだけではなく、早期にSE/PLへの道が開けるという大きなメリットもあると考えています。組織として、どう若手を育成していくかが重要になりそうです。(AI導入で浮いた工数・原価を、どこまで/どのように育成に割くか。)
6. さいごに
保守改善・派生開発をアジャイルで回す現場で、開発プロセスを仕様駆動開発(SDD)ベースに組み替えました。
品質と生産性の水準を維持したまま、メンバー数20%・原価25%の削減を達成できたのが、今回の一番の成果です。
もともと粒度の細かい基本設計書——ウォーターフォール型の設計書に近い形式——を作成していたこともあり、SDD への移行自体は比較的スムーズでした。
ただし、現状は基本設計書を仕様の中心に据えており、SPEC ファイルを前提とした SDD の理想形とはまだ距離があります。
要件定義からの AI 作成や SKILL/rules の整備、若手のキャリアパスなど、「5. メリット/デメリット」で触れた課題への対応もこれからです。
それでも、レビュー集中という構造的なボトルネックを外し、プロセスごと変えた効果ははっきり出ました。
利益面の改善はもちろんですが、個人的に大きかったのは SE増加による発注元への直接貢献です。
原価削減だけでなく、お客様(発注元)と直接向き合えるメンバーを増やせた点も大きいと感じています。
新規案件の受注拡大にとどまらず、 金銭面 だけでなく 人が生み出す価値 として、メンバー一人ひとりがお客様に直接貢献できる——そう思っています。
おまけ 本取り組みの成果物
◇要件定義(人による作成)

◇基本設計(人による作成)

◇基本設計AIレビュー結果


◇テストケース



◇基本設計作成 AI用ルールファイル



◇テストケース作成 AI用ルールファイル

おまけ その2 本ブログ作成


