お客様自身でダンパーを
簡単に調整できるアプリの開発支援
AC事業本部 技術統轄部
電子技術部
石田様
技術本部 基盤技術研究所
岐阜分室
伊奈様
発注を検討するに至った経緯を教えてください
石田様:カヤバの主力製品の一つに自動車のダンパーがあります。ダンパーとは、車体と車輪の間に取り付ける装置。走行中に路面から伝わる振動を制御するためのものです。未舗装路や山道などのデコボコした道であっても安定して走行できるのは、ダンパーのおかげと言ってもいいでしょう。これまでカヤバは、自動車メーカーからの「こんなダンパーを作って欲しい」という声に応えてモノづくりをしてきました。ですが、百年に一度の変革期と言われる現在、クルマへの要求が多様化し、EV(電気自動車)への参入企業が増えてくるにつれて、提案を求められる機会が増えてきました。
提案するには、自動車オーナーが何を求めているか知る必要があると考え、スマホアプリとダンパーを組み合わせた製品を開発し、スマホを通じて自動車オーナーのニーズを掴めないかということを考えました。具体的には、カヤバが自動車メーカーに納入している電子制御ダンパーをスマホと接続し、クルマを運転するお客様自身で減衰力をチューニングできるアプリ。このアプリを通じて、ダンパーをチューニングするとこんなにも走りが変わるのかということをお客様に体感していただき、これまで以上にクルマを好きになって欲しいと考えています。とは言え、アプリ開発は全くの未経験。ゼロからの出発だったので、どうすれば良いのかと。そんなタイミングでアプリ開発系の展示会があり、そこで三恵クリエス様に声をかけていただきました。実は、慣れない業界の展示会で内心ドギマギしていたのですが、三恵クリエス様のブースは白を基調として落ち着いており、安心感が持てたのと、担当の方がサーキット走行をしたことがあると伺いピンッ! ときました。
契約する際に三恵クリエスを選んだ理由はありますか?
石田様:展示会のあと、三恵クリエス様からWebミーティングの申し入れがあり、スマホアプリ開発の可能性がある別プロジェクトのメンバにも声を掛けて一緒に話を伺いました。
実は私たちよりもその別プロジェクトのほうが先に契約をしまして。「いい会社を紹介してくれてありがとう」と声をかけてもらいました(笑)
その後私たちもアプリ開発が必要となるのですが、その時点でとにかく時間がなくて。2か月後に弊社の試乗会があって、そこでお披露目をしなければいけない。契約もこれから。要件も文書化できていない。そんな状況も含めて委託開発が可能か相談させて頂いたところ、契約は別プロジェクトで交わした範疇で対応できますよと。要件の文書化についても、一緒にやるので心配ないと。準委任型のLABO契約のためかなり自由度が高く動けるので、先にカチッと固めなくても大丈夫ですと。細かい仕様変更にも柔軟に対応し、チームがスピード感をもって開発してくれると聞き安心して契約しました。
どのような効果がありましたか?
伊奈様:石田から、三恵クリエス様に出す要求の一部として、ワイヤフレームと呼ばれるアプリ画面の設計図を作成するよう頼まれました。ワイヤフレームなんて作ったことがなくて(汗)作成用のツールをいろいろと調べたところ、見た目だけでなく動きまで作りこめるツールを見つけ、それを使ってなんとか作りました。それから1週間後のWEBミーティングで、提示したワイヤフレームを反映したアプリ画面のデザインが提案されて驚きました。UIが洗練されているのはもちろんですが短期間で3パターンも。しかも全部がいい! 自分で作ったものがカタチになる嬉しさもありましたが、クオリティと仕事の早さに感動しました。それと、WEBミーティングの進行が素晴らしくて社内にも浸透させたいなと強く思いました。今日、話す内容をアジェンダにして周知するのはもちろんのこと、フレームワークを使用して要件や優先順位を定義したり、不安や分からないことを出し尽くして話しあってくれたのが印象的。毎回、オンラインだってことを忘れるくらいチームの存在を身近に感じられました。
石田様:確かに、WEBミーティングやりやすかったよね。WEBミーティングと言えば1つエピソードが。初めてテストコースでクルマを走らせる前日の夜のこと。完成したばかりのアプリをテストしようと1人で実験室にいたのですが、動かない。あれ、なんで? 焦っても、みんな帰ったあとで誰にも聞けない。しばらく1人でなんとかしようとあれこれやったのですが、どうにもいかず。
ダメもとで三恵クリエス様にグループチャットで助けを求めたところ、即座に反応が。状況を説明したところ緊急のWEBミーティングを開いていただき無事に解決できました。急な依頼にも関わらず、快く対応頂けて驚きました。
今後の展望、未来のありたい姿を教えてください
伊奈様:今年1月の東京オートサロンに出展した際に、アプリもお披露目して実際に触っていただきました。説明がなくても直感的に操作できると、とにかく好評で。特にUIがいいと。そのおかげで、欲しい機能について貴重な意見を多くいただけました。今後ですが、お披露目したアプリには最低限の機能しか入れていないので展示会でいただいた意見をもとに拡張していきたいですね。自分なりに気持ちよく走行できた設定をSNSでシェアできるようにしたり。製品化に向けて今後もブラッシュアップをしていきたいです。
石田様:オートサロンでの手応えは私も実感しています。クルマ好きのお客様がブースを訪れてくれた際にデモ機を触りながら「手動でチューニングできるダンパーの購入を検討していたけど、この製品が発売されるのを待ちます。」と、嬉しい言葉をかけてくれました。この人のためにも1日も早く製品化をっ! と思えたくらい。今後については、展示会で会ったクルマ好きのお客様のために製品化するのはもちろんですが、アプリを通じてお客様とコミュニケーションをしていきたいですね。展示会でいただいた意見もそうですが、ユーザーのニーズをしっかりと理解して提案型のモノづくりに活かしたい。そのためにも、三恵クリエス様にはアイデアや開発の支援を期待したいです。
三恵クリエスにご発注いただき、ありがとうございました
弊社のMISSIONに「可能性を耕し、価値を育てる」という言葉あります。本案件は、カヤバ様と弊社、クルマの愛好家の方々に提供する「新たな価値」を生み出す足がかりとなるプロジェクトになったと感じます。
具体的には、「車に取り付けられたダンパーをBLE通信によって操作し、クルマの乗り心地を調整できるアプリ開発」のPoC支援をさせて頂きました。本来、ダンパーの調整は特殊な機材を使って行うもので、街中でできるようなものではないとのこと。画期的な取り組みをご支援させていただけるのだと心が躍りました。PoCの性質上、弊社で推進している「アジャイル開発」の進め方もマッチしていたと感じます。週次で定例を実施する中で、早い段階から実際にアプリを操作して頂き、ご要望を可能な限り反映できるよう「RICE scoring」などフレームワークを用いながら尽力させて頂きました。
納品から数ヶ月後、アプリを東京オートサロンで展示いただくとのことで、私も現地に伺いました。開発段階では、擬似モジュールで確認を行っていたため、実物を目にするのは初めてです。少し緊張しながらアプリを操作する弊社社員の様子を見守っていました。アプリを操作し「送信」のボタンを押すと、減衰力の違いが体感できる。2つの技術が「繋がる」瞬間は大変感動的でした。滅多にできない経験をさせていただいたと思います。カヤバ様の案件を通し、『価値を育てた』先にあるものを実感することができました。今回の出会いから得た学びをさらなるサービス向上に活かせるよう、努めて参ります。
(担当:三恵クリエス 原)